| 会場 | : | メインシアター (西アトリウム) |
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1881年、グラハム・ベルはランプのすすに断続的な太陽光を照射すると可聴音が出ることを発見しました。現在、彼の独創的なアイデアである光―音波の変換は材料科学や医療の多くの分野で利用されていますが、可聴音は超音波と断続的なレーザー光の組み合わせに置き換えられています。われわれは偶然にも、市販の白色LED懐中電灯をカーボンナノチューブマットに照射すると、直接耳に聞こえる音が出ることを再発見しました。音の大きさは、ナノ粒子の総重量、サイズ、材料の種類によって異なります。測定可能な最小の可聴音量は、炭素ナノチューブではナノ・グラムオーダーとコロイド金粒子ではマイクロ・グラムオーダーです。ここでは、パルス・モード、デューティ・サイクル、白色LEDや近赤外線レーザーランプを用いた照射光、試料の周囲環境による音響共鳴などの実験条件の観点から、可聴音波から得られる音圧レベル(SPL)の詳細なスペクトルを論じます。
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<略歴>1982年 千葉大学大学院工学研究科修士課程修了。1987年 東京工業大学工学博士。 (財)相模中央化学研究所研究員、1988年 千葉大学工学部助手、同講師、同助教授、分子科学研究所助教授を経て1999 年 名古屋大学大学院工学研究科教授。2002年 東京大学大学院工学系研究科教授、2019年 東京大学卓越教授。<主な受賞> 2014年紫綬褒章, 2018年ウルフ賞化学部門, 2019年 恩賜賞・日本学士院賞, 2023年 朝日賞
我々は、配位結合を駆動力とするナノスケール構造体、特に中空構造体の自己集合構築を35年間にわたり研究してきた。この研究の応用として、2013年に結晶化を必要としないX線構造解析手法である結晶スポンジ法(CS法)を創出した。CS法では、細孔性金属錯体単結晶に対象試料を溶液から吸蔵させ、細孔を鋳型として試料化合物の周期配列を形成させることで、結晶化工程を経ずにX線回折測定が可能となる。得られた回折データを解析すると、ホスト骨格に加え、吸蔵によって細孔内に新たな周期配列を形成した試料化合物の構造が明確に示される。「あらかじめ周期配列した空間に試料を流し込む」という原理により、我々はX線構造解析の百年問題を解決した。本講演では、分子サイズや極性など従来のCS法が抱えていた制限を克服した、新たな第二世代CS法を紹介する。
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1982年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。北海道大学講師、助教授を経て 1994年東北大学工学部教授、1995年東北大学電気通信研究所教授、同研究所長などを務め、2018 年第22代東北大学総長に就任。2024年東北大学総長特別顧問、経済産業省特別顧問(科学技術担当)、2025年に東北大学特別栄誉教授。専門はスピントロニクス。日本 IBM 科学賞、The IUPAP Magnetism Prize、日本学士院賞、江崎玲於奈賞、C&C 賞など多数受賞。
AI が社会の隅々に浸透する一方で、情報処理のエネルギー需要は急増している。巨大データセンターは膨大な電力を消費し、環境中のセンサー群は限られた電源で動作する必要がある。こうした課題に対し、電子のスピンを利用するスピントロニクスは、半導体の省エネルギ化と新しい計算原理の実現に道を開く。不揮発メモリ素子は待機電力を不要とし、情報処理の大幅な省電力化を可能にする。さらに、熱ゆらぎを利用した確率的デバイスは、最適化や学習など創発的な情報処理に力を発揮する。新物質の開拓も進み、スピントロニクスはナノスケールからグリーンで知的な情報処理を支える基盤技術として進化している。