【ENEX 基調講演】地球温暖化をめぐる国際情勢の動向と課題
【講演者プロフィール】
1982年東京大学経済学部卒業
同年 通商産業省(現経済産業省)入省
OECD日本政府代表部参事官、IEA(国際エネルギー機関)国別審査課長、
資源エネルギー庁国際課長、同参事官などを経て
2008年〜2011年 大臣官房審議官地球環境問題担当
2011〜2015年 JETROロンドン事務所長兼地球環境問題特別調査員
2015年8月 東京大学公共政策大学院教授、2021年同大大学院特任教授、現職
【講演概要】
我が国のエネルギー温暖化政策策定においては1.5℃目標、2050年全球カーボンニュートラルが大きな前提となっている。2023年のグローバルストックテイクでは「1.5℃目標を射程内に収める」べく、世界全体で再エネ設備容量を三倍増、化石燃料からの転換等の野心的なメッセージが盛り込まれたが、同時に2050年カーボンニュートラルと整合的なエネルギーミックスには年間4~5兆ドルの膨大な資金が必要とのメッセージも盛り込まれた。途上国への新たな資金援助目標を議論するCOP29においては途上国の要求額年間1.3兆ドルを大幅に下回る年間3000億ドルで議論が決着した。しかし途上国の不満は非常に強く、トランプ政権の下では米国からの資金貢献は全く期待できないため、3000億ドルに向けた進捗もままならない。温暖化問題は国際政治経済情勢とも密接にリンクしており、現実的かつ多面的なアプローチが重要である。