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メインシアター(西1ホール会場内)

2020年1月31日(金)

特別シンポジウム:nanoレベルでの生命現象を意識した創薬・医療

 
クライオ電顕が医学・薬学分野に役立つ時代に
医学・薬学分野に役立つクライオ電顕
11:45-12:15

藤吉 好則

東京医科歯科大学

高等研究院

特別栄誉教授

藤吉 好則

【講演者プロフィール】

1996年から京都大学大学院理学研究科の教授、2012年から名古屋大学細胞生理学研究センターのセンター長・教授・特任教授・客員教授として勤務し、2019年から東京医科歯科大学特別栄誉教授に就任した。2017年には株式会社CeSPIAを創設した。クライオ電子顕微鏡の開発を行うと共に、水チャネルやイオンチャネル、受容体、ギャップ結合チャネル、タイト結合等の膜タンパク質の構造と機能研究を行ってきた。


【講演概要】

我々は、脳に多くの発現がみられる水チャネルAQP4の構造解析により、そのチャネル内の水分子を分離して観察することに成功している。これらの構造解析によって、水チャネルの高い水選択性と速い水透過能の機構を理解できるようにした。しかし、これらの解析に用いた電子線結晶学は、結晶化を必要とするので、この方法が多くの研究者に使われる状況にはならなかった。ところが、単粒子解析法が発展することで多くのタンパク質の構造が解析されるようになり、クライオ電顕が医学・薬学分野に役立つ時代となって来た。例えば、多くの創薬標的タンパク質やそのリガンドが副作用などのために、ゴミ箱に入れられている。これらを助け出す方法として、リガンドが標的分子に結合している複合体の構造情報を基にして、そのリガンドを改変することによって、薬を作りきるDrug Rescuingと名付ける創薬戦略が可能になってきた。

クライオ電子顕微鏡解析で見えてきた膜タンパク質の分子機構と創薬に向けて
12:15-12:45

濡木 理

東京大学

大学院理学系研究科 生物科学専攻 教授

濡木 理


【講演概要】

2018年7月にBINDS東京大学拠点のクライオ電子顕微鏡(Titan Krios、Talos Arctica)が稼働を開始した。この1年で、我々の研究室だけで17種の新規膜タンパク質の立体構造を単粒子解析で決定している.中でも、Eat-meシグナルであるフォスファチジルセリンを細胞膜表面から細胞質側に反転するP4フリッパーゼに関しては、6状態全ての輸送中間体の構造を解くことに成功し、脂質輸送の分子機構が明らかになった。また5種のGPCR関して、共役する3量体Gタンパク質との複合体の構造を解明し、リガンド捕獲およびGタンパク質活性化の動的機構に関して新たな知見を得ることに成功した。現在クライオ電子顕微鏡の単粒子解析の特長を活かし、創薬標的となるタンパク質のダイナミクスから機能発現のメカニズム解明を目指している。