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メインシアター(西1ホール会場内)

2020年1月30日(木)

特別シンポジウム:マテリアルズ・インフォマティクス:「できる」から「できた」へ

 
データベースを用いた圧力誘起超伝導材料の開発
~室温超伝導はもはや夢ではない~
10:35-11:05

高野 義彦

物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)

MANA / ナノフロンティア超伝導材料グループ

主任研究者 / グループリーダー

高野 義彦

【講演者プロフィール】

横浜国立大学附属横浜中学校卒業、横浜市立大学卒業、横浜市立大学博士課程修了、博士(理学)。
東京大学物性研究所特別研究員等を経て、1999年物質材料研究機構研究員。2006年よりグループリーダー。筑波大学、東京理科大学、東京電機大学の連係大学院教授を兼任。高温超伝導体、ダイヤモンド超伝導体、鉄系超伝導体などの研究に携わる。現在は室温超伝導体を目指してデーターと高圧力を使った新規超伝導体の探索に挑戦している。


【講演概要】

データーを用いた新機能性物質の探索が興味を持たれているが、その具体的な実施例は未だ少ない。我々はデーターベースをもとに、圧力下で超伝導になる新規物質の探索を行った。約1500個の物質を出発点にして、電子状態を計算し、状態密度が高く超伝導になりそうな候補物質を絞り出した。さらに、圧力下の電子状態の計算も行い、加圧により金属化する物質を抽出した。このプロセスにより選び出された物質を実際に合成し加圧して電気抵抗を測定したところ、なんと新規超伝導体を連続して5個も発見することができた。このように、データーを用いた物質探索により発見確率をきわめて高くすることができた。本手法は超伝導に限らず、様々な機能性物質の発見に応用できるものと考えられる。

機械学習を用いた高品質半導体結晶成長プロセスの開発
SiC溶液成長における大口径化技術を例に
11:05-11:35

宇治原 徹

名古屋大学

未来材料・システム研究所

教授

宇治原 徹

【講演者プロフィール】

SiCをはじめとした結晶成長・評価の専門家。最近では、結晶成長に限らず様々なプロセス最適化において機械学習を応用に関する研究を行っている。1999年京都大学博士後期課程を終了後、東北大学金属材料研究所を経て2004年から名古屋大学。


【講演概要】

半導体結晶の大口径化技術の開発は非常に長い時間を要する。その一つの理由は、結晶成長には多くの制御パラメータがあるためである。我々は、結晶成長シミュレーションの高速代理モデルを機械学習を用いて構築し、非常に高効率に最適パラメータを見出す手法を開発した。実際にSiC溶液成長に応用することで、非常に短期間で大口径化技術を確立した。

機械学習を用いた超狭帯域熱放射多層膜の開発
11:35-12:05

櫻井 篤

新潟大学

准教授

櫻井 篤

【講演者プロフィール】

2007年:東北大学 工学研究科 博士課程 修了,日本学術振興会特別研究員.2008年:新潟大学 工学部 助教,2013年:新潟大学 工学部 准教授として現在に至る.2013年 ~2014年までジョージア工科大学客員研究員.また、2018年より物質・材料研究機構 特別研究員,2019年よりJSTさきがけ研究員を兼務している.専門は、熱工学・光工学であり、メタマテリアルを用いた熱放射(熱輻射)物性やエネルギー輸送について研究を行っている.


【講演概要】

 機械学習と熱放射物性計算(電磁波計算)を組み合わせて、世界最高クラスの狭帯域熱放射を実現する多層膜を最適設計し、実験にて実証することに成功しました。物体が熱を電磁波として放出する熱放射現象は、波長制御ヒーターや赤外線センサー、熱光起電力発電などのさまざまなエネルギーデバイスへの応用が期待されています。熱放射エネルギーを無駄なく利用するためには、有用かつ狭い波長帯での熱放射スペクトルを持つ材料が必要となります。本研究では、約80億通りにも上る候補構造の中から、熱放射性能を大幅に向上できる最適構造を探索したところ、半導体材料と誘電体が非周期的に並ぶような非直感的なナノ構造が得られました。さらに、この最適多層膜構造を実際に作製してその熱放射スペクトルを計測し、極めて狭帯域な熱放射が実現できていることを実証しました。これによって高効率な省エネルギーデバイスの実現が期待されます。

機械学習によるタイヤ用ゴム材料の開発
12:05-12:35

小石 正隆

横浜ゴム株式会社

AI研究室

エグゼクティブフェロー / 研究室長

小石 正隆

【講演者プロフィール】

1985年横浜ゴム(株)入社。CAE研究室研究室長、理事・小石研究室研究室長を経て、2020年1月よりエグゼクティブフェロー・AI研究室研究室長となり現在に至る。入社以来、タイヤとゴム材料に関する計算力学、多目的最適化、データマイニング、機械学習の研究に従事。また、日本機械学会(フェロー)の第92期計算力学部門部門長を務め、2016年には同学会より計算力学功績賞を受賞。現在は関東CAE懇話会会長も務める。博士(工学)。


【講演概要】

製造業の企業活動の中でも設計開発に焦点を絞ると、AI(機械学習)に対して我々はデータドリブンによる「理解」と「発見」を期待している。新たな発見には従来ドメインの外側での探索(外挿的探索)が肝要となるため、往々にして試験データに基づいた機械学習だけでは不十分である。一つの解決策が計算科学と機械学習との組合せである。本講演では、これまで弊社で取組んできたゴム材料開発のためのマテリアルズ・インフォマティクスについて私見を交えながら紹介する。